研究概要 |
貴金属ナノ構造体に励起されるプラズモン共鳴は,特異な光特性を示すため,近年盛んに研究されている。申請者は,これまでに近接場光学顕微鏡を用いてプラズモン波動関数の可視化に成功している。プラズモン共鳴は,電子的にも励起可能である。エネルギー分析可能な非弾性トンネル分光顕微鏡により,プラズモン波動関数の可視化が可能である。本研究では,電子励起されたプラズモン波動関数を可視化し,それを光学励起した波動関数と比較することを目的とした。昨年度までに近接場トンネル分光顕微鏡を試作し,トンネル電流像を比較的高空間分解で得ることに成功していたが,複数回ごとに信号ノイズ比が低下することが明らかとなっていた。探針のコンタミネーションや距離制御の安定性がその原因と考えられた。平成23年度は,試作した非弾性トンネル分光顕微システムの最適化と光学測定によるプラズモンの波動関数の可視化に取り組むこととした。トンネル顕微鏡には,開口型近接場プローブをプローブとして兼用していたが,これが動作の不安定性の原因である可能性があったため,本年度は新たに電解研磨法を用いた金属(金およびタングステン)プローブ探針の製作に取り組んだ。条件検討により,先端径数十nmの金属探針を再現性良く作成することが可能となった。これにより,散乱型の近接場光学測定とトンネル電流計測が実現される。作成したプローブのテスト計測から,表面形態像,電流像を比較的安定に測定できることを確認した。しかし,波動関数の可視化には至っていない。現在,引き続き探針形状,測定条件検討を進めるとともに,電場誘起トンネル発光計測などの準備も進めている。一方,プラズモン波動関数の光学測定では,金属蒸着膜,電子線リソグラフィーで作成したナノ構造体,化学合成したナノ構造体について研究を進め,プラズモンモードに関する知見を得ることに成功した。
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