本研究では実用的な実時間(RT)発展形式のTDDFT(RT-TDDFT)法の確立を目指した。また、高次の非線形励起過程、励起状態の超高速な緩和過程などへのRT-TDDFT計算の実践的な応用を行った。具体的には、非線形応答に対応したRT-TDDFT法の開発および多次元紫外・可視分光法への応用研究を行った。まず、本研究の予備的段階で完成している線形応答に対するRT-TDDFT計算のプログラムをもとに、非線形項を考慮したプログラムの実装を行った。これを用いて、紫外・可視領域の多次元分光法に対するシミュレーションを行った。分子の振動状態間の相関を観測できる分光法として2次元赤外・ラマン分光は理論と実験の両面から研究が行われてきたが、紫外・可視領域の多次元分光法に対する実験報告は未だに存在しない。すなわち本研究は理論先行で多次元紫外・可視分光法の特長を検討した。その結果、励起状態間のエネルギー緩和過程の観測にこの分光法が有効であることが示された。また、摂動展開に基づく上記の理論とは別に高次項まですべて含むRT-TDDFT計算プログラムも開発した。これにより、高次高調波の実時間発生メカニズムについて検討した。
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