研究課題/領域番号 |
22655008
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中井 浩巳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00243056)
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キーワード | RT-TDDFT法 / 電子・核軌道理論 / 非定常状態 / 非平衡状態 / 量子化学計算 |
研究概要 |
本研究では実用的な実時間(RT)発展形式のTDDFT(RT-TDDFT)法の確立を目指した。また、高次の非線形励起過程、励起状態の超高速な緩和過程などへのRT-TDDFT計算の実践的な応用を行った。昨年度までに開発した非線形応答に対応したRT-TDDFT法を用いて、多次元紫外・可視分光法への応用研究を行った。分子の振動状態間の相関を観測できる2次元赤外・ラマン分光と同様に、2次の応答を調べることにより、励起状態間の相関を観測できることが理論的に示された。さらに、3次の応答を調べることにより、励起状態におけるエネルギー緩和過程を観測できることも示された。また、本研究ではRT-TDDFT法の高精度化・汎用化を目指した研究も展開した。具体的には、内殻励起が関与する現象にも対応できるように、新しいDFT交換汎関数を提案した。新しい汎関数は軌道特定型(OS)汎関数と呼ばれ、軌道エネルギーが満たすべき物理条件から汎関数の形が決定される特徴を持つ。また、原子核の量子効果を高精度に考慮するために、これまで開発してきた核・電子軌道(NOMO)理論をさらに発展させた。新しい方法では、原子核一電子間距離を露わに基底に導入することにより、核・電子相関を効果的に考慮することに成功した。大規模化への展開としては、分割統治型(DC)線形スケーリング法を構造最適化・周波数依存超分極率計算・開殻系MP2計算等に対応させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、理論・方法論が4テーマ、応用計算が6テーマであった。現在、理論・方法論に関してはが2テーマ、応用計算では3テーマが終了している。また、応用計算については、残りの2テーマについても進行中である。理論・方法論については、当初予定になかった「大規模化への展開」というテーマもかなり進展があった。一方、基底の問題は克服困難で、理論・方法論の1テーマは見直しが必要な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進んでいるテーマは、当初の予定通り進める予定である。上述(項目11)の基底の問題については、ガウス基底に限定せず、平面波や数値基底、さらに、それらのハイブリッドについても検討する。
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