研究課題/領域番号 |
22655013
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩澤 伸治 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (40168563)
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キーワード | ホウ素化反応 / イリジウム錯体 / 炭素-水素結合活性化 / メタ位選択的ホウ素化 / 機能性錯体 |
研究概要 |
手がかりとなる配位性官能基から離れた特定の位置に存在する炭素-水素結合を選択的に活性化することは現在でも極めて困難な課題である。本研究では炭素-水素結合の位置を識別し活性化することのできる新たな機能性金属錯体の創製を目指し研究を行った。前年度の研究では、エステルカルボニル基から異なる炭素鎖数を介してフェニル基を反応部位として持つナフチル基の置換したビピリジン配位子を合成し、これをイリジウム錯体化しジボロンを用いる芳香族炭素-水素結合のホウ素化反応の検討を行ったところ、低収率ながらフェニル基の炭素-水素結合がメタ位:パラ位=9:1の比率でホウ素化されることを見出した。生成物が低収率でしか得られなかった原因として、ナフタレン環ペリ位の水素原子と反応部位との立体反発により、反応活性化部位に基質が接近しづらかったためと考え、本年度の研究では、ナフタレン環にかえキノリン環部位を有する機能性配位子を設計・合成し、その選択的ボリル化反応について検討を行った。まず8-ヒドロキシキノリンから数段階を経て2位にTfO基の置換した8-ヒドロキシキノリンを合成し、これと5-スタンニルビピリジンとのカップリング反応により、機能性配位子の合成を行った。次いでこれに基質となるフェニルアルカン酸部位をエステル結合形成を利用して導入し、目的の機能性配位子の合成を達成した。そこでこれを用いてイリジウムとの錯体形成による芳香環のメタ位選択的ボリル化反応の検討を行った結果、フェニルプロパン酸エステル誘導体を用いた反応において、前年度まで用いていたナフタレン環を含む機能性錯体と比べ、収率はほとんど変わらなかったものの、メタ位選択性はおよそ30:1と大きく向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究は概ね順調に進行し、当初の目的である遠隔位の炭素-水素結合の選択的活性化に高い選択性を実現することに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は、反応効率の向上、ならびに反応の触媒化である。反応効率の向上に関しては反応条件のさらなる検討を行い、反応の触媒化に関しては、ボロン酸エステル形成による反応基質の可逆的な捕捉方法について検討を行う予定である。
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