交付申請書に記載した、求核試薬のハロアセチレンへの単純付加であるType Iと、求核試薬がハロアセチレンへ付加したのちカルベン発生を伴うType IIの反応について、以下の成果が順調に得られた。 (1)Type Iの反応 窒素求核試薬であるイミダゾール、ベンゾイミダゾール、あるいはイミダゾリンは1-プロモ-1-アルキンとともに加熱するだけで効率良く付加し、求核試薬とプロモ基がcisになった種々の1-プロモ-2-イミダゾリル-1-アルケン等が選択的に収率良く得られた。このような立体化学の定まったプロモアルケニルイミダゾール類は、医薬中間体等として合成的に有用である。 一方、従来のプロトン酸またはルイス酸触媒ではハロアセチレンへの芳香環の求核付加反応は進行しない。しかし、これがRh触媒で促進されることを見い出し、たとえば(3-ハロプロパルジル)アリールエーテル類(ハロ=CI or Br)は、ハロベンゾジヒドロピラン類を収率良く与えた。同様に、種々のハロジヒドロナフタレンやハロジヒドロキノリン類も収率良く得られ、これらのハロゲン部位を利用した炭素鎖伸長反応も実現でき、その合成的有用性を実証出来た。 (2)Type IIの反応 アミンをスルフィン酸塩共存下で1-プロモ-等-アルキンとともに加熱すると、アセチレンヘアミンの求核付加が進行した後に中間に生成したカルベンがスルフィン酸塩でトラップされ、1-スルホニル-2-アミノ-1-アルケン(スルホニルエナミン)が得られた。この生成物を加水分解することにより、種々の1-スルホニル-2-アルカノンが収率良く得られた。またアミンの付加を分子内で行うと、種々の環状β-スルホニルエナミンが得られ、官能性含窒素複素環化合物の合成法として有用なことを明らかにした。
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