研究概要 |
本年度は、触媒活性種であると考えられるπアリルパラジウム錯体をTPPTSを配位子として用い合成、単離し、撹枠による効果を確認した。酢酸パラジウムを天領としたときには、入手先は精製度合いにより、反応の速度に再現性がなかったり、誘導期間が見られたりしていた。これは活性中間体の生成にある程度時間がかかることを示唆していると考えられた。そこで活性種と考えれるπアリル錯体を別途合成単離しこれを用いて、ベンゼンチオールの1,1一時メチルアリルアルコールによるアリル化を二相系触媒反応条件下で行うと、再現性よく高撹搾状態で分岐体優先的なアリル化反応が進むことが明らかとなった。さらにこの反応では、界面活性税の添加、特にアニオン性の界面活性化剤が特段の分岐体選択性を向上することが明らかになった。この場合には、反応系がエマルジョン状態になっていることが確認されており、分岐体を生成すると思われる活性中間体の濃度が、界面活性剤によるミセルの生成によって増加したのではないかと推定した。いずれにしても、水/有機溶媒のまじりあわない界面において、有効な触媒活性種が生成していると考えることができる。しかしその構造や反応性については、直接的に見たり検討することが非常に難しく、現在のところ、解明には至ることができなかった。水/有機溶媒界面の状態を探るため、界面張力の測定を触媒がある揚合とない場合、イオン性または中性の錯体がある場合など比較検討するため、予備的な界面張力の測定を行ったが、その違いには有意な差が見られず、物理的な違いは見出すことはできなかった。今後は理論計算による推測も可能であるが、溶媒分子の取り扱いには未だ信頼性の高いものはなく、液液界面の物理化学的研究手法の発展がこのような異常な現象の解明できるようになることを期待したい。
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