研究概要 |
電子の反粒子である陽電子を用いた新表面分析法の一つとしてマイクロ陽電子励起オージェ電子分光法(Microprobe positron induced AES,μPAES)を開発することが目標であった。従来の電子励起オージェ電子分光法やX線光電子分光法ではその選択性は電子の平均自由行程に依存し,数層の平均情報となってしまう。一方で陽電子による内穀電子の対消滅現象を励起源とした場合,表面選択性は陽電子の表面捕獲によって生じるため,原理的に表面第一層のみを検出する分析法が実現できる。問題点は,電子と比較してその輝度が1/10^<16>と低い陽電子では電子と同じ手法での集束化では強度の損失が多大であり,マイクロビーム化が困難であったことにある。申請者は磁場輸送陽電子の高効率一次集束による磁場からの切離し手法の関発,輝度保存を克服するための透過型再減速材の開発(特許出願済み),対物レンズの関兜などによりその問題点を克服しており,それを励起源としてμPAESの関発を着想した。 本研究では,その陽電子マイクロビーム発生装量に,セミインレンズ方式の対物レンズによってμmオーダーまでの集束系の開発を行い,オージェ電子を分光・検出する計測系を製作してμPAESのための光学系を新規に構築した。それにより微弱なオージェ信号の取得には成功し,本着想を実証にいたった。しかしながら.陽電子発生源として放射性同位元素^<22>Naを用いているため励起源の強度が10^3e+/s程度と低いことがネックとなることがわかった。
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