研究概要 |
1.反応の一般性の検討 前年度最適化した助触媒,α,α,α-トリフルオロ-4-メチルアセトフェノンを共存させ,4種類のケイ皮アルデヒド誘導体の自己環化反応を試みたところ,trans/cis選択性(trans/cis=91:9-48:52)には問題点が残されたが,極めて高いエナンチオ選択性で反応が進行することを明らかにした。 2.反応生成物の絶対立体配置の決定 ケイ皮アルデヒドの自己環化生成物について,カラムクロマトグラフィーによるtrans/cis異性体の分離キラルHPLCによるtrans体の鏡像異性体の分離を行い,純粋なマイナー成分を単離した。次いで,(R)十q-ナフチル)エチルアミンを作用させることでテトラヒドロフラン-2-オン環を開環し,得られたアミドの単結晶を作成した。これについてX-線結晶構造解析をし,trans体の主成分は(4S,5S)であることを明らかにした。また,CDを比較することにより,cis体の主成分は(4S,5R)であると推定した。 3.反応機構についての考察 主生成物の絶対立体配置及び助触媒の反応加速・立体選択性向上効果を考慮し,以下の触媒反応機構を考えた。(1)カルベン触媒とケイ皮アルデヒド誘導体からのホモエノラート等価体(I)の生成,(2)1とα,α,α-トリフルオロアセトフェノン誘導体からの交差環化生成物前駆体(II)の生成,(3)その際立体障害・ダイポール相互作用に基づく立体制御による(4-交差環化生成物前駆体の優先的生成,(4)IIとケイ皮アルデヒド誘導体とからの遷移状態(III)の形成,(5)遷移状態IIIにおいて,IIに存在するα,α,α-トリフルオロアセトフェノン誘導体分子の脱離に伴うケイ皮アルデヒド誘導体への求核攻撃,(6)その際,4-位の立体の反転。この反応機構により,以前報告した交差環化生成物の立体化学と矛盾することなく自己環化生成物の立体化学を説明できた。
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