本研究では、安価で取り扱いの容易な第一遷移元素を触媒として用いた、反応基質のsp3およびsp2炭素―水素結合の切断を鍵とする、効率的な複素環構築法や複素環誘導体化法の開発を行うことを目的としている。前年度の結果をもとに、銅を用いるメチルアニリン類と種々アルケンとの酸化的環化カップリング反応について検討した。その結果、塩化銅を触媒とすると、これまでに見出した電子不足環状アルケンのみならず、アリール基とニトリル基を有する非環状アルケンとの環化縮環反応が50℃程度の加熱条件において進行し、対応するテトラヒドロキノリン誘導体が生成することがわかった。一方、銅を用いた炭素―窒素結合生成についても検討を行い、オキサジアゾールやベンゾオキサゾールのような複素環に加え、電子不足芳香族化合物であるポリフルオロアレーンとNHスルホキシイミンの酸化的直接カップリングが、酢酸銅を用いると室温空気下で効率よく進行することを見出した。ここで光学活性スルホキシイミンの鏡像体過剰率は保持されることを確認した。また、関連する反応としてアゾール類とフェニルアジン類、1-ピリミジルインドール、あるいは安息香酸アミドとの直接的炭素―炭素カップリング反応が、基質に依存して酢酸銅を触媒量ないし量論量を用いることによって、芳香族炭化水素溶媒還流条件で選択的に効率よく起こることを見出した。
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