研究概要 |
室温で液状となるフラーレン誘導体の分子設計を基に、40重量%以上の高密度でフラーレン部位を含む溶媒可溶な高分子微粒子を合成し、そのn型半導体としての性質を明らかにすることを目的とした。分子設計のポイントは、フラーレン間のπ-π相互作用を抑制するように配置した3本のアルキル長鎖構造にあり、分子が巨大化しても十分な溶解性を確保できると期待した。高分子材料としての薄膜形成能と高い電子移動度まで実証し、有機エレクトロニクスデバイス応用の可能性を提示する。 フラーレンC_<60>は、Prato法により6個まで置換基を導入できることが知られている。しかしながら、嵩高い置換基の場合には立体障害のためその限りではないと考えた。まず、共モノマー構造がフラーレンに置換できる最大数を見積もるために、大過剰の2,4,6-トリアルコキシベンズアルデヒド誘導体の存在下でPrato反応を実施した。生成物は複数置換体の混合物であり、粗精製のままHPLC測定およびMALDI-TOF-MS測定を実施した。主生成物の置換数は4と見積られ、計画している重合反応おいてC_<60>が四官能性モノマーとして機能する可能性を示唆した。 この結果を基に、C_<60>とジホルミルベンゼン誘導体(共モノマー)の仕込み比を変化させて、Prato法による重縮合を実施した。重合条件を詳細に検討した結果、ジホルミルベンゼン誘導体の仕込み比が多い時に得られるフラーレン高分子は、有機溶媒への高い溶解性を有することが分かった。
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