研究課題
室温で液状となるフラーレン誘導体の分子設計を基に、40重量%以上の高密度でフラーレン部位を含む溶媒可溶な高分子微粒子を合成し、そのn型半導体としての性質を明らかにすることを目的とした。分子設計のポイントは、フラーレン間のπ-π相互作用を抑制するように配置した3本のアルキル長鎖構造にあり、分子が巨大化しても十分な溶解性を確保できると期待した。高分子材料としての薄膜形成能と高い電子移動度まで実証し、有機エレクトロニクスデバイス応用の可能性を提示する。前年度に合成したC_<60>高分子と同様の方法論を用いて、有機溶媒に可溶なC_<70>高分子を得た。C_<70>とジホルミルベンゼン誘導体(共モノマー)の仕込み比を変化させて重合条件を検討した結果、ジホルミルベンゼン誘導体の仕込み比が多い時に高い溶解性を有する高分子が得られた。溶媒可溶なC_<70>ポリマーは自立膜を作製することができた。粘弾性測定したところ、貯蔵弾性率が10^7~10^8 Pa程度であり、プラスチックに比べて軟らかいものの脆い性質を併せ持つことが分かった。C_<60>とC_<70>両方のフラーレンポリマーの物性を調査した。両ポリマー共に熱分解温度は300℃を超えており、非常に安定であった。電気化学測定では多段階の還元波が明確に現れ、フラーレンの特性を保持していることを示唆した。吸収スペクトルではフラーレン部位の共役系に由来した長波長吸収が存在していた。クロロホルムやTHF等の有機溶媒に可溶であるため、湿式法によって容易に薄膜を作製できた。アルミニウムで高分子膜を挟みメモリー特性を評価したところ、DRAM型の特性が観測された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、2年目に目的高分子の合成と同定を完了している。さらに、有機エレクトロニクスデバイス応用の一環としてメモリー特性の評価を実施しており、予備的な結果が得られている。
フラーレン高分子がn型半導体特性を有していることを明らかにする。薄膜トランジスタあるいはTime-of-flight法より移動度を明らかにする。メモリー特性を詳細に調べて、フラーレン部位の導入量との相関を明らかにする。さらに、有機薄膜太陽電池のn型半導体としての応用も試験する。
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