AlaとAibとの交互配列をもつ16量体ヘリックスペプチドの末端にポルフィリンを導入した。合成の確認は、マススペクトルおよびNMR測定により行った。このペプチドを、金基板上に固定化した自己組織化膜を調製し、ポルフィリン環の相互作用を、UV測定により評価した。CV測定によるブロッキング観察より、このペプチドの自己組織化膜は稠密であることが示された。ソーレー帯の吸収極大波長は、溶液中の415nmから長波長に移動したことから、隣接するポルフィリン環は、J会合体様であることが示された。ヘリックス軸の基板法線方向からの傾き角は25度前後であり、垂直配向と考えられる。これに対して、ポルフィリン環は、基板方向に倒れていると解釈される。ポルフィリンをもたないヘリックスペプチドとの混合SAMを調製したところ、ポルフィリンの表面密度が低下するにも関わらず、ソーレー帯の長波長側へのシフトは小さくなった。このことから、ポルフィリン環自身に、head-to-tail型に並ぶ特性があることが示唆された。この特性に基づいてポルフィリンが並ぶために、ヘリックス軸の傾き角も小さくなっていることが考えられる。外部刺激により、ヘリックス軸の法線方向からの傾き角を変えるには、今後、ポルフィリン環の配向を水平配向から垂直配向に近づける必要がある。このためには、ポルフィリン環にZnを配位させ、隣り合うポルフィリン環を二価配位子で固定化するなどの工夫が必要と思われる。
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