本研究課題においては、究極のナノマシンとして分子サイズの駆動素子"分子モーター"を構築することを目的とした。輪と軸分子からなるロタキサンは人工回転分子モーターのモデルとして、ガラス基板上にロタキサンを構築し、単一分子観測を試みた。本年度は人工回転分子モーターの観察に当たり、より観察しやすい蛍光分子を修飾した回転分子の合成とその蛍光発光挙動について明らかにした。 人工モーターモデル分子の合成 1.PDI-CD_2を用いたロタキサンの合成と発光挙動 ガラス基板上でのシクロデキストリン(CD)からなる分子モーターの構築した。高精度で単一分子計測を行う分子設計として、ローターとなるCDには発光強度の強い発光性を示すペリレンジイミド(PDI)を色素分子とした[2]ロタキサンの合成を行った。PDIは水に対する溶解性が低いため、PDIの両端にCDを修飾したPDI-CD_2を合成した。結果、水溶液中においても非常に高い発光強度を示し、単一分子計測にも適していた。特にこれまでのRhodamin Bを使用していた時よりも長時間観測することが可能となった。 2.PDI-CD_2を用いた蛍光顕微鏡観察 PDI-CD_2を回転分子として、ガラス基板上にロタキサンを作成した。作成したガラス基板を蛍光顕微鏡により確認したところ、明確な単一分子による蛍光発光を確認した。またデフォーカス測定も成功し、回転分子の分子配向を決定することができた。現在、滴下溶液を水から粘度の高い高分子溶液に変更し、さらにこの高分子にはPDI-CD_2を分子認識による相互作用のあるゲスト分子を修飾し、回転運動をリアルタイムにて計測できる試みを行っている。特にこのゲスト分子は刺激応答性を有しており、回転運動のON/OFF制御が可能ではないかと考えている。
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