球状シリカ微粒子の2次元コロイド結晶の上方向から金の真空蒸着を行った後、シリカをフッ化水素(HF)で溶解除去し、ピコリッターサイズの金カップ規則配列体を作る。さらに金カップ内壁に温度、pH、光などの外部環境変化に応答して性質が変わるポリマーをグラフトすることで、革新的な刺激応答性のピコリッターサイズ反応容器の作製を目指す。このような金カップ規則配列体はインクジェットプリントの技術との組み合わせで、微小スケールのコンビナトリアルケミストリーなどへ応用できる。 今年度は、直径6μmの球状シリカ微粒子をガラス基板上に、2次元的に配向したコロイド結晶の作製を行い、上方向から金を真空蒸着することでシリカ微粒子の半面だけを金でコートしたヤヌス粒子を作製した。作製したヤヌス粒子を超音波照射でガラス基板から剥離した。またヤヌス粒子のHFによる処理でシリカを溶解除去し、ミクロンサイズの金カップの作製に成功した。金カップ内部へのゲスト分子の取り込みと放出を制御するために、金カップ内壁への外部刺激応答性ポリマーのグラフトを検討した。pHの変化に応答して極性が大きく変化する脂肪酸を側鎖結合したモノマー(AaH)を可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)型の制御ラジカル重合法により重合を行った。RAFT重合により得られるポリマーはポリマー鎖の末端にジチオエステル基を含むので、アミンや還元剤を用いた末端基の分解によりチオール基に誘導した。チオール基は金表面に結合するので、溶液中で金とポリマーを混合することにより金表面にpH応答性のポリマーをグラフトした。ポリマーがグラフトできたことを表面のpHの変化に応答して接触角が変化することから確認した。
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