今年度(平成23年度)は、異種シクロファン型大環状分子の複合化および大環状分子をモノマーとする高分子合成、ベンジルアミノ型大環状分子誘導体への高効率変換と機能開拓、を主たる目的に掲げ、以下に記載した成果を得た。 1.異種大環状分子の複合化および大環状分子をモノマーとする高分子合成 環状m-フェニレンイミン六量体Cm6とオクチロキシ側鎖を有するOcOCm6が混在する溶液を加熱して各鎖状オリゴマーに変換、冷却すると主にそれぞれの大環状分子がπ-スタッキングによって再生するが、MALDI-TOF MSを詳しく調べると、側鎖の有る5ユニットと無い1ユニットから成る複合大環状分子も存在することが判明した。また、異なるビルディングブロックから構成された鎖状オリゴマーが生成することを確認し、異種大環状分子をモノマーとする共重合が可能であることを見出した。 2.ベンジルアミノ型大環状分子誘導体への高効率変換と機能開拓 イミン結合をヒドリド還元することによって、環構造が崩壊させずほぼ定量的にCm6をベンジルアミノ型大環状分子(Cm6H)へと変換できることがわかった。Cm6HはフラーレンC60を極性溶媒に可溶化させ、インジゴカルミンやニューコクシンなどの色素と特異的に沈澱形成することを見出した。また、水中におけるPEG鎖の包接を示唆する実験結果が得られた。 3.大環状分子が形成する柱状ナノ空間への固相基質取り込みおよび構造制御 TEM支援電子線回折(岡山大学・内田准教授)の結果から、扁平板状構造の大環状分子Cm6はπ-π相互作用によって分子間距離0.38nmで柱状積層することが明らかになった。また、オクチロキシ側鎖を有するOcO-Cm6もCm6同様ヘキサゴナル相を形成することが判明した。単結晶X線構造解析によってCm6分子間に、合成時の溶媒であるTHF1分子と水6分子クラスターとがdisorder状態でインタカレートしていることがわかっているが、現在、固相反応を実現すべく大環状分子内部を貫通する分子を探索中である
|