本研究では、水素吸蔵特性を持つ金属バナジウムおよび金属パラジウムのナノ粒子を用いて架橋配位子による金属ナノ粒子とMetal Organic Framework (MOF)との複合化を検討し、両者の特徴を持つ構造体の創製を目的とした。 金属バナジウムのナノ粒子を用いる構造体の合成は次のように行った。最初にTHF溶媒中、四塩化バナジウムを前駆体とし、架橋配位子及び保護配位子の存在下、SuperHydrideによる還元を行い、バナジウムナノ粒子の合成を行った。生成した黒色の反応液にメタノールを加え、遠心分離による精製を試み、透過型電子顕微鏡で観察したところ、ナノ粒子は上澄み中に確認された。この上澄みに対してテトラフルオロホウ酸鉄(II)(Fe(BF_4)_2)を加え、テルピリジン基を介した架橋反応を行い、遠心分離による精製を行ったところ、上澄み中にナノ粒子が確認された。ナノ粒子間の間隔が錯形成前では約2.5nmであるのに対し、錯形成後では約1.5nmと間隔が狭まっており、鉄(II)イオンの添加により架橋バナジウムナノ粒子ネットワークが生成したことが示唆された。 金属パラジウムについては、ペンチルイソシアニドを配位子とするナノ粒子をSuperHydrideによる塩化パラジウムの還元法によって合成し、それをケイ素を中心とするテトラキス(テルピリジン)配位子で架橋することによるナノ細孔をもつ三次元構造体の合成と物理吸着および水素吸蔵特性を評価した。架橋配位子のサイズを大きくすることによって、窒素ガスの物理吸着能を示す細孔を有する構造体も得られた。
|