本研究ではヘキサトリエン型分子に特徴的なペリ環状光閉環反応による芳香縮環構造の光形成反応を利用し、π共役系の発達した平面構造分子を光生成させることでπスタックカラムナー構造を形成させる新しい光反応性分子システムの構築を目指す。平成22年度は特に(1)光加工性を有する芳香族縮環ユニットの光開発と高効率化に取り組み、ターアリーレン骨格に光脱離ユニットとしてメトキシ基あるいはエトキシ基を導入した新規光応答分子を合成した。検討の結果、光照射に伴って光閉環反応が進行しさらにアルコールが光脱離し、非可逆的に芳香族分子が形成することが見いだされた。また、この分子について光脱離反応にともなって分子会合が誘起され、微粒子が形成することが見いだされた。一方、光脱離反応の反応機構を解明する目的で様々な分子を系統的に合成し、その光反応性と分子構造の相関を検討した。また反応性を検討する目的で、メトキシ基とメチル基を導入した分子を合成しだ。この分子ではメタノール光脱離することなく、変わってメトキシ基の光転移が進行することが見いだされた。 さらにこのような分子の化学構造の最適化を検討した結果、D3h対称性を有する新しい分子の可能性を見いだし、その量子科学計算により分子構造予測を行った。その結果、期待通りに光縮環反応後にはD3h対称性を有する多環芳香族分子が形成することが予測された。そこで、この分子について合成方法の検討を行った。
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