本年度は昨年度の実績に基づき、下記のテーマについて研究を行い、一部を除き所期の目的をほぼ達成できた。 1.新規臭素およびヨウ素回収技術の検討 実際に使用されている難燃性プラスチックのポリ臭素化モノマーやX線造影剤であるトリヨードベンゼン誘導体を用いて脱臭素化と脱ヨウ素化をそれぞれ検討した結果、前者は殆ど脱臭素化が進行しなかったが、後者については脱ヨウ素化が円滑に進行し、中量のヨウ素を塩として回収することに成功した。 2.脱ハロゲン化のスケールアップの検討 本電解システムは連続処理が可能であり、陰極と隔壁を兼ねているパラジウム管を集積することで大量の有害塩素化合物の処理にも対応できるものと期待される。そこで、実際にパラジウム管を4個直列に連結しスケールアップ用の装置を試作し、脱ハロゲン化を検討を行った。スケールアップは4倍には達しなかったが、スケールアップできることを実証した。電解装置の大型化など実用化に向け、本システムの諸問題を抽出し、システムの改良を行い、実用化への指針を得た。 3.様々な触媒還元プロセスへの応用 1)オレフィン類の水素化:本システムは脱ハロゲン化のみならずオレフィン類の高効率的水素化反応にも適用可能であることを様々なオレフィン類を用いて実証した。本システムはオレフィン類の溶液をパラジウム管に一回流通させながら通電するだけで高効率で水素化が達成できることを例示した。 2)ジアゾ染料の脱色反応:環境汚染物質であるジアゾ染料廃液の脱色を試みたところ、発色団であるジアゾ基が電気化学的に効率よく水素化され、脱色されることを明らかにし、本装置が染料廃液処理にも応用できることを例示した。
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