研究概要 |
多孔性錯体は細孔サイズをサブナノから数ナノメーターの範囲で設計が可能であり、水素結合を始めとする多彩な相互作用基を空間内に導入することができる。このような特徴をつかうことで、セルロース鎖を効果的に補足できるチャンネル空間の設計を行える。また、細孔表面に-SO3Hや-COOHなどの強酸性基を配置させることで、取り込まれたセルロースを効果的に分解することも可能になるはずである。本研究では、特に酸触媒として機能することが期待できるリン酸やスルホン酸基含有多孔性金属錯体の合成を行った。具体的には、まず、ジルコニウムと芳香族ジホスホネートからなる多孔性構造(ZrBP)を構築した。合成時のジルコニウムイオン、配位子、フッ酸の添加量を変えることで、細孔系の変化を試みたが、精密な制御には至らず、1nm程度のミクロ孔と5nm程度のメソ孔が混在する多孔体が生成した。この材料を使って、セルロースの加水分解を試みたが、ほとんど反応は進行しなかったので、ZrBPの配位子をスルホン化することでより強力な酸触媒材料の構築を試みた。実験はZrBPをlgに対して、発煙硫酸8mlを加え、しばらく攪拌することで、生成物(S-ZrBP)を得た。得られた生成物のIRスペクトルを測定すると1044cm-1にピークが見られ、スルホン化が進行していることが確認された。そこで、S-ZrBPとセルロースを1:5の割合で水中で加熱し、セルロースの加水分解を試みた。しかし、分解反応はほとんど進まず(6%程度)、得られた生成物もグルコースやその誘導体とは異なり、NMR,IR,マス測定を試みたが、その同定はできなかった。今後はS-ZrBPの吸着測定や酸性度測定をすることで、固体酸触媒としての性能の評価をしていく
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