自律的な光駆動型DNA分子計算を開発において本年度(最終年度)は駆動型DNA分子計算システムの評価系として、標的遺伝子としてコドン12の点変異(GGT→GTT)によりガン原性を獲得するKras遺伝子の転写反応をリアルタイムPCRにより評価した。まず光クロスリンク反応を用いた1塩基変異検出の選択性を評価した。正常遺伝子にのみ光クロスリンクし、変異型遺伝子には光クロスリンクしないように設計した光クロスリンクオリゴDNAを合成し、遺伝子に光クロスリンクを行い、PCRによる増幅をおこなうことで、変異型遺伝子のみを増幅・検出できると考えた。即ち本システムは論理回路としてはNOT回路を用いており、入力した光駆動型DNAが架橋した遺伝子は転写されない系であるがん原遺伝子である変異型K-ras遺伝子を持つ膵臓ガン由来細胞(Capan-2)および正常型K-ras遺伝子を持つ膵臓ガン由来細胞(BxPC-3)から遺伝子DNAを抽出した。変異部位近傍に光クロスリンク可能なCNVKを含む合成オリゴDNAを添加し、K-ras遺伝子との光クロスリンクを行った後、PCRによる増幅を行った。アガロースゲル電気泳動によりPCR増副産物の確認を行った結果、光クロスリンクを行うことで正常型K-ras遺伝子を持つBxPC-3の場合のみ、遺伝子増幅が大きく抑制された。一方、1変異型K-ras遺伝子をもつCapan-2の場合には、光照射による遺伝子増幅の抑制は見られず、変異型遺伝子のみを選択的に増幅できることが示された。以上から、自律的な光駆動型DNA分子計算による高選択的かつ高感度な遺伝子増幅・検出が可能であることが示された。
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