研究概要 |
1.mRNA中に存在するレアコドンによる翻訳伸長反応速度の減衰 翻訳反応を開始したリボソームをmRNA上の特定の位置で一時的に停止させ、その後、同調したリボソームによる経時的な翻訳伸長反応過程の評価を可能にした。この評価法を用いて、モデル遺伝子のmRNAにおける翻訳伸長反応の経時変化を評価した。その結果、mRNA中での使用頻度が低いコドン(レアコドン)の位置で翻訳反応速度が減衰することを、従来の評価法よりも短い時間分解能で明らかにした(Endoh et al, Anal. Chem., 84,857)。 2.mRNA中に存在するRNA高次構造による翻訳伸長反応速度の減衰 核酸の非標準構造の一つである四重鎖構造に着目し、mRNA中に存在するRNA高次構造が翻訳伸長反応にどの程度影響するのかを解析した。大腸菌のゲノム配列からRNA四重鎖構造を形成し得る配列を網羅的に検索し、5つの遺伝子の翻訳領域中に四重鎖構造を形成し得る配列が存在することを明らかにした。これらの配列について、翻訳伸長反応の経時変化を評価した。その結果、四重鎖構造を形成するmRNA領域の6塩基から8塩基手前の位置で翻訳反応が停滞することを見出した。また、塩基変異により四重鎖構造を不安定にした配列では、翻訳反応の停滞が起こらないことも確認した。レアコドンと比較して、四重鎖構造は、長時間(10分以上)の翻訳伸長反応の停滞を起こしていたことから、翻訳反応に付随するタンパク質の構造形成過程にも影響を与えうると予測される。 3.転写反応に伴い形成されるRNA構造による転写反応効率への影響 mRNA中のRNA高次構造は、転写反応に付随して形成される。この新生RNAの熱安定性が、転写反応効率に大きく影響することを明らかにした(Nagatoshi et al., Chem. Commun., inpress)。
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