本研究の目的は、独自の環状構造を有するDNAを塩基選択的に金属化することで負の屈折率を持った物質であるメタマテリアルを自己組織化的に作製することである。これまでミリ波や赤外線を対象にしたメタマテリアルが作られてきたが、微細加工限界のため可視光に対して負の屈折率を持つ構造は作れなかった。本提案では酵素合成した環状二重らせんDNAを部分的に金属化することで、理論的に可視光に負の屈折率を持つと予測されるsingle split-ring resonators(SSRRs)のサイズを制御して作製できる技術を確立するとともに、ラングミュアー・プロジェット法による三次元積層構造の構築をめざす。 具体的には以下の3つの研究項目に従って研究を進めている。研究項目I.(研究計画)酵素反応によりサイズが制御された環状DNAを作製する。研究項目II.(研究計画)塩基配列に応じて部分金属化を行い、SSRR単位素子を作製する。研究項目III.(研究計画)得られたSSRR単位素子を基板に配列・固定化して三次元集積を図る。 本年度は研究項目IとIIに着手した。その結果、環状DNAを作製するための知見が得られたものの完全が環状物の合成には到らなかった。しかしながら塩基配列に応じた部分金属化について、シスプラチンが結合しない修飾核酸を用いたモデル化合物による予備実験に成功した。これにより、環状DNAの部分金属化について見通しがたった。
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