カーボンナノチューブ(CN)は、新しい電子材料として注目されているが、その溶解性の低さに起因するプロセス性の乏しさが課題となっている。本研究では、CNとケイ素-π電子系ポリマーのハイブリッド化による有機溶媒への可溶化を利用して、無機あるいは高分子材料表面にCNを固定化し、さらに配向集積するプロセスを開発することを目的とした。とくに本年度は、CNの含量の多い新規なハイブリッド材料の合成と、ケイ素-π電子系ポリマー/CNのハイブリッド材料の集積と配向を重点的に検討し、有機電子デバイスへの応用を目指した。 1. CNの含量の多いケイ素-π電子系ポリマーとのハイブリッド材料を合成する目的で、CNとの親和性が高いことが知られているピレンをフレキシブルで溶解性の高いオリゴシロキサン鎖で架橋した全く新しいタイプのポリマーを独自に開発した手法で合成した。得られたピレン―オリゴシロキサンポリマーをCNと混合し、ハイブリッド化することに成功した。シロキサンをベースとした可溶性CNハイブリッドの初めての合成例である。 2. 電子機能材料への応用を念頭に、よりπ電子系の広がったポリマーとしてオリゴチオフェンを含むドナー/アクセプター型のケイ素ポリマーを合成し、CNとハイブリッド化した。さらに、光反応によって酸化チタンへの固定化に成功し、色素増感太陽電池への応用を検討したところ、0.2%の光電変換効率を得られた。 3. 1・2で合成した新規のハイブリッドをスピンコート、キャストによって熱可塑性の有機材料上へコートした材料を作製することができた。延伸配向の実験を検討中である。継続して、配向集積に向けて検討を続ける。
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