申請者らが発見し命名した「spongec rystals(スポンジ結晶)」とは、単結晶が、全体の単結晶の秩序性を失わずに、結晶の規則構造には組み込まれていないナノメートル程度の細孔を単結晶内部に生成する全く新しい多孔質単結晶の生成原理に基づく多孔質単結晶であり、ゼオライトのような従来のマイクロポーラスクリスタルとは原理的に異なる新しいタイプの多孔質結晶である.本年度は、ヘテロポリ酸塩(NH_4)_4SiW_<12>O_<40>の多孔質性の解析に注力した。この化合物は、カチオンとアニオンの比が4:1であるにもかかわらず、粉末X線回折はカチオン:アニオン比が3:1の(NH_4)_3PW_<12>O_<40>と同じ回折パターンを与えることを確認した。N2吸着等温泉はI型となり、その吸着量から計算した空隙率は、25%に達した。元素分析からはほぼ想定された組成になっていることを確認した。このことから、カチオン:アニオン比が3:1の結晶構造のカチオンサイトをすべてNH_4カチオンが占めて、組成比を保つためにアニオンサイトが1/4欠損し、その欠損が外部と連結している細孔モデルが改めて支持された。リートベルト解析の結果もこのモデルと矛盾はない。細孔の配列が規則的であるとするとX線回折に現れると考えられ、細孔は特別な秩序を持たず、スポンジのように単結晶中にランダムに空いていると考えられる。NH_4カチオンの一部をプロトンに置換すると、SF法で解析した細孔径分布のピークが大きい方へシフトした。これは細孔内壁に露出しているNH4カチオンがファンデルワールス半径の小さいプロトンに替わったことに対応していると考えられ、組成による細孔径制御の可能性が示唆された。
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