研究概要 |
LED光源を用い,マメ科植物であるクズ(Pueraria lobata)のカルスを大量培養できる方法を確立した.同様にLED光源下でのサトウキビのカルス培養も検討した.葉緑素を有するサトウキビ細胞のカルス培養は可能であったが,大量培養できる条件の確立には至らなかった. 糖が存在しない培養液中でクズ細胞を分散させ,LED光源下で一週間培養を行った.一週間後の培養液を液体クロマトグラフ質量分析により調べたところ,グルコースとスクロースが検出された.これは光合成で生産された糖が細胞外に分泌されることを示唆している.よって,クズ細胞を高分子ナノファイバーに固定化した場合,光合成により生産された糖をナノファイバーと通して回収できる可能性を確認することができ,このことが今年度得られた知見で最も重要と思われる.しかしながら,検出された糖の濃度は十分ではなく,実用的には現時点よりも100倍程度は濃度を高くする必要があると考えられた.また,エレクトロスピニング法を用いて,エチレン-酢酸ビニル共重合体ナノファイバー不織布に固定したクズ細胞を培養液中に分散させたが,培養液中からは糖を検出することができなかった.今後は,より多くの細胞をナノファイバーに固定する,あるいは,より光合成能が優れた細胞を大量培養してナノファイバーに固定することが課題である.
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