研究課題
本研究では、異常ネルンスト効果は温度勾配によって発生したスピン流の逆スピンホール効果であるという仮説に基づいて、室温で巨大な異常ネルンスト効果を示す材料の探索を行う。具体的には、高い磁気異方性を示すFePtに代表されるL1_0型規則合金と高いスピン分極率を有するハーフメタルホイスラー合金に着目し、物質依存性を系統的に研究する。最終的には、室温で巨大な異常ネルンスト効果を実現するための材料創製の指針を得ることを目標とする。今年度は、L1_0型FeNi薄膜の磁気異方性エネルギー依存性を調べた。FeNi薄膜作製時の基板温度を変化させることにより、磁気異方性エネルギーを3×10^6erg/cc~3×10^7erg/cc程度変化させた。これらの薄膜の異常ネルンスト効果を測定したところ、磁気異方性エネルギーの増加に従って異常ネルンスト電圧の大きさは減少することが分かった。この結果は、異常ネルンスト効果の発現にスピン波が寄与していることを示唆している。また、高いスピン分極率を有するハーフメタルホイスラー合金材料「Co_2MnSi」薄膜における熱流磁気効果を系統的に調べた。面内磁化膜であるCo_2MnSiの片端にPtバーを取り付け、磁化と同方向に熱勾配を印加したところ、Ptバーの両端間に、スピンゼーベック効果に加えて付加的な電圧を観測した。これは、膜面垂直方向に生じた熱勾配によって生じた異常ネルンスト効果に起因する電圧であることが分かった。同様な効果をパーマロイ薄膜においても確認することができた。これらの結果から、室温で巨大な異常ネルンスト効果を示す材料の探索に向けた指針を示すことができた。
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Journal of Applied Physics
巻: 111 ページ: 07B106-1-07B106-3
10.1063/1.3677824