本研究では、最終的には局所発光制御可能なドットマトリクス型半導体発光デバイスを用い、その上に膜タンパク質を含んだ脂質二重膜を形成することで、ラフト構造を介した膜タンパク質輸送・凝集のアクティブ制御の実現を目指している。当該年度は、最初の段階として、局所光照射による相分離構造凝集制御を行い、次に相分離構造をコレステロールを含むラフト構造の制御へと発展させた。 本研究開始前において、比較的広範囲の光照射による相分離構造・ラフト構造の凝集制御まではできていたが、数ミクロン~数十ミクロン径の局所的光照射による制御はできていなかった。まず、その原因を調べたところ、生体膜における光エネルギーの吸収効率が非常に低いことと、生体膜中の脂質分子の拡散係数が小さいことが原因であることがわかった。前者に関しては、生体膜にドープする蛍光脂質量の制御することで、後者に関しては、生体膜を保持するバッファ液のイオン濃度制御および膜中の欠陥抑制によって改善した。その結果、半導体レーザーによる局所光照射による相分離構造凝集制御に成功した。 さらに、これらをラフト構造に適用するために、脂質組成にコレステロールを加えて実験を行った。 その結果、光によるラフト構造制御についても確認した。さらに凝集過程を詳細に調べるために、蛍光顕微鏡と原子間力顕微鏡を同時にリアルタイムに観察するシステムも構築し、光照射領域とラフト構造形成位置との相関をより詳細に調べる体制も整った。
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