本研究では、最終的には局所発光制御可能なドットマトリクス型半導体発光デバイスを用い、その上に膜タンパク質を含んだ脂質二重膜を形成することで、ラフト構造を介した膜タンパク質輸送・凝集のアクティブ制御の実現を目指している。昨年度は、最初の段階として、局所光照射による相分離構造凝集制御を行った。特に、脂質二重膜における拡散係数制御を膜を保持するバッファ液のイオン濃度制御および膜中の欠陥抑制によって改善した。その結果、半導体レーザーによる局所光照射による相分離構造凝集制御に成功した。本年度は、局所光照射によるドメイン凝集技術はおおむね確立した。本年度は、ドメインへのタンパク質凝集の確認をメインに行った。 マイカ基板または表面を熱酸化した後、親水化処理を行ったSi基板上に、ベシクルフュージョン法で平面脂質二重膜を作製した。脂質組成はDMPS/DOPC(=20:80)にTR-DHPEを1mol%加えたものを用いた。蛍光顕微鏡を用いてその膜を観察した。光照射によるパターニングは、膜を45度に保持して1分間光照射をした後、温度を5度に下げることで行った。ドメインと蛋白質との結合を検証するためにPSと選択的に結合する蛍光色素(AlexaFluor488)付きの蛋白質Annexin Vを用いた。光照射領域の縁に多くのドメインが形成した。ドメインが形成した膜にAnnexin Vを加え、TR-DHPEとAlexa Fluor 488のそれぞれを蛍光観察したところ、黒く観察されたドメインが、Alexa Fluor 488を励起すると明るく観察された。これにより、酸性リン脂質(DMPS)のドメインが形成され、そこにAnnexin Vが選択的に結合することが証明された。これは、Annexin Vの代わりにセプチンのような蛋白質を加えれば、ドメインが形成した領域の形状が選択的に変化する可能性を示唆する。
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