電子伝達タンパク質シトクロムcとDNAで構成されたネットワーク構造の電気特性について検討を行った。電極は以前に開発した傾斜蒸着法を用いて、およそ50-100nm幅を持つスリット状のもの利用した。室温においては、オーミックな特性を示したが、低温になると、閾値を持って立ち上がる特性に変化した。二次元クーロンプロッケードの式で良く記述出来ることが明らかになった。 しかし、10×10程度のクーロン箱を使ったシミュレーションとは、立ち上がり付近のカーブが合わず、実験を定性的に理解するにも、他の要素が必要なことが明らかになった。個々のシトクロムcのクーロンエネルギーが分布を持つと仮定したシミュレーションでは、曲線の曲率方向が合わないことが明らかになった。そこで、現在、トンネル抵抗に分布を持たせたシミュレーションとの比較を試みている。シトクロムcの酸化還元サイトは分子の中心では無く、その位置に偏りがあり、さらにシトクロムcの配向が制御できていないため、トンネル抵抗には大きな分布を含んでいると考えられる。 試料作製の方法について、シトクロムcとDNAの混合溶液を基板上に滴下乾燥させるだけでなく、滴下後に大過剰のエタノールを滴下して速やかに沈殿を作ることで、再現性の良い試料形成が可能であることを発見した。この方法を用いれば、これまで主に用いてきた高価で供給が不安定なpoly (dA) poly (dT)を持ちいなくとも、安価かつ安定(2)供給されるλDNAを用いて、再現性良く電気特性の安定した試料を得ることができた。来年度の実験でも主に用いていく予定である。
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