シトクロムc/DNAおよびMn12核錯体/DNAの電気伝導メカニズムを明らかにするため、I-V特性について温度依存性を詳細に調べた。200K以上の高温領域では、フランケループールの伝導モデルに良く一致した。したがって、トラップサイトのあるホッピング伝導であると理解できた。伝導の活性化エネルギーは、アレニウスプロットから約20-30meVであった。90K以下では、フランケループールのモデルから大きくずれてくる。I-Vカーブは明らかな立ち上がりを示すようになる。このようなI-V特性は低次元クーロンブロッケードモデルでよく記述できた。低次元クーロンブロッケードモデルには、オーダーパラメーターζがある。このζ値は、シトクロムc、Mn12にかかわらず、分子アレイの担体であるDNAネットワークの次元性に依存していると考えられる。実際、Mn12核錯体/DNAでは、一次元的なテクスチャを反映してζ値は小さく、シトクロムcの二次元的薄膜、バンドルなど三次元的要素を含んだテクスチャになるに従って、次第に大きくなっていた。このように、ζ値とネットワークのテクスチャに良い対応があるというは、分子ネットワークの中で、電流の分岐と合流が起こっていることを示している。すなわち、分子ネットワークアレイが分子回路ネットワークとして機能していることを意味している。 分子ネットワークをエレクトロニクスの観点から意味あるものにするためには、ネットワークに対して、複数の入出力端子を設置することが重要である。そこで、任意の形をもつナノスケールの電極形成法として、ナノトランスファープリンティング法を開発した。シリコンモールドをもとにレプリカを作成し、その上に剥離剤を塗布後に金を蒸着した。これを分子ネットワーク上に転写することで電極を形成した。現在、隣の電極と50nmの間隙を有する16電極の形成に成功した。
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