研究課題/領域番号 |
22656012
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
富取 正彦 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (10188790)
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キーワード | ナノコンタクト / 表面・界面物性 / 走査プローブ顕微鏡 / 走査電子顕微鏡 / 物性実験 |
研究概要 |
本研究の目的は、2物体の間隔を正確に制御できる走査型プローブ顕微鏡(SPM)技術を利用して、2つの微小物体を高温状態で接近・接触・溶融合・分離させること、および、その際の電気・力学特性を計測し、その過程と構築されるナノ接点・接合を直視的に観察・解析することである。この操作・観察・解析には、超高分解能電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)と組み合わせた独自開発ペンシル型SPMを用いる。この装置で、試料とSPM探針の1000℃以上の加熱、接近・接触・溶融合を実現し、さらに引離すことによってナノ結晶を引上げ成長させる。また、探針で試料を局所的に加圧しGPaオーダの圧力を静・動的に発生させる。本研究により、ナノデバイスに要求される電気的ナノ接点構築の基礎(ナノ合金・界面科学技術)を発展させる。 本装置の小型加熱ヒータ(タングステン(W)フィラメント)に担持させたゲルマニウムおよびグラファイト(アクアダック)を1000℃以上に加熱し、Pt-Ir探針の先端をその溶解部に接触させ、その部位を加圧した。その結果、探針先端に、ナノスケールの引き上げ結晶成長が起こって突起が形成されたり、凝固した炭素材料の付着物が形成されることが観察された。この実験で、加圧接触させる探針を鋭利にすると接触圧が高くなると予想した。そこで、YAGパルスレーザを利用して、金属線を加熱で融解させ、そこに電圧を印加することでテイラーコーンを形成し、切断部を急峻に先鋭化させた。また、その探針を接触実験に用いるための装置改良として、この針を取り付けて力を感度良く計測するための水晶振動子センサーおよび駆動回路を開発した。原子間力顕微鏡に装着し、Si(111)7x7表面の原子像を観察できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子材料として重要な、Geやカーボンの高温接触・分離の操作・観察に成功している。推定温度1400℃のタングステン・フィラメント・ヒータ(WFW)に探針を押しつけて、探針先端を溶かしたり、WFWのワイヤーに押しつけて融解接合させたり、その状態から探針をWFWから引き離して、切断することもできている。その様子を走査型電子顕微鏡で観察し、動画撮影している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、実験対象を拡大する。探針の調製法にテイラーコーンを利用した手法を導入し、高温高圧下での接点形成を試みる。予備実験として、両端に電圧を印加した金属線にパルスYAGレーザ光を照射して、局部的に高温を発生させて切断し、テイラーコーンが形成できるかを試す。その切断部を本研究の複合顕微鏡で観察・評価を行う。その切断部を高温ヒータに接触させ、形状変化や接合形成の様子をその場で調べる。この複合顕微鏡を自在に操作するためには、まだ操作者に熟練を必要とする。実験操作の精度の向上をめざして、また、操作法の簡易化をめざして、装置の改良も進める。
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