原子間力顕微鏡(AFM)を用いて近接場超音波ホログラフィー(SNFUH)法により試料表面下の構造評価を行うためには、カンチレバーの振幅検出を高感度にかつ広帯域にわたって行えるような変位検出系を備えたAFM装置の利用が必須であることが分かってきた。 このため、AFMの変位検出系の光学系および電子回路系の最適化により、変位換算ノイズを10fm/rtHz程度にまで低減し、検出帯域も5MHz程度にまで高めた。また、高分子薄膜上に散布した金属微粒子に高分子薄膜をスピンコートしたサンドイッチ構造試料を作製し、試料の底面を圧電素子により駆動し、SNFUH法および超音波力顕微鏡(UFM)法により、試料表面下の微粒子が可視化できることを確認した。また、圧電素子の駆動周波数の2次高調波成分の検出による微粒子の可視化を試みた結果、SNFUH法およびUFM法と比べて信号対雑音比が低いことが分かった。従って、SNFUH法およびUFM法に共通する、接触共振周波数における振動成分が試料表面下の可視化に大きく寄与していることが示唆された。 一方、圧電素子により超音波試料を発生させる方法では、圧電素子とカンチレバーの機械的結合の周波数特性にスプリアスピークが多く含まれるため、SNFUH法およびUFM法における可視化メカニズムの解明にあたって問題であり、カンチレバーの振動を直接的に励起できる励振手法をAFM装置に実装することが不可欠となることが分かった。
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