研究概要 |
幹細胞の医療応用に立ちはだかる大きな課題に幹細胞から移植用細胞等を作製するまでの期間が1月-1年と極めて長いことが挙げられる.本研究では,この課題解決のため,パルスプラズマ照射による細胞増殖の1~2桁の加速を目的として,細胞周期と同期をとって照射を行い,細胞増殖速度のパルスプラズマ照射時間,照射強度等への依存性を定量的に明らかにする.さらに,パルスプラズマ照射による細胞増殖の加速機構を解明する. 平成23年度は、平成22年度に得られたカイワレの種子へのプラズマ照射による成長促進について、成長促進機構を検討するとともに、酵母を用いてプラズマ照射による細胞増殖加速機構を検討した。 カイワレの種子へのプラズマ照射による成長促進機構解明のため、成長促進に対する酸素ラジカルの影響を調べた。酸素ラジカルの照射量と成長度の関係を調べた結果、酸素ラジカルの照射量の増加とともに、成長が加速していることが明らかになった。また、カイワレ種子の殻のSEM、FT-IR測定から、表面に変化が見られないことから、酸素ラジカルが細胞増殖加速の重要なパラメータであることが明らかになった。 乾燥酵母へプラズマ照射を行い、酵母数の増殖曲線を調べたところ、プラズマ照射により、停滞期がなくなり、プラズマ照射直後から増殖が始まることが明らかになった。またプラズマ照射時間を長くすると、増殖が抑制され、不活性になることが明らかになった。この現象は、プラズマからの光のみでは起こらないことから、細胞増殖加速は、プラズマで生成したラジカルに起因するものであること、またプラズマ照射により、細胞増殖加速を制御可能であることが分かった。
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