研究概要 |
本研究においては,ナノスケールでの異種材料あるいは異種結晶界面の健全性を支配する原子パラメータを学術的及び定量的に解明することで,ナノ結晶組織を制御した高機能あるいは高性能複合材料を設計開発するための基本技術を確立することを目的とする.特に格子不整合に起因したひずみ勾配と,異種元素間の不安定原子結合が混在する界面あるいは結晶,異層粒界近傍における原子拡散を支配する異種元素間結合物理化学パラメータを解明することで,界面構造の安定化を図り,積層構造あるいは異層混相構造からなる高機能性材料の長期信頼性を確保する材料設計と試作評価を通した実証研究を推進する. 本年度は分子動力学解析手法を応用し,ひずみ起因の異方的増速拡散現象の支配メカニズム解明研究を推進するとともに,その抑制材料システムを提案し,実験による実証研究を並行して推進した.ガスタービン用耐熱合金である金属材料を対象とし,Ni基超合金の高温クリープ・疲労損傷の支配メカニズム解明とその抑制を目的とし,原子レベルシミュレーションを駆使して添加元素を提案した.また,複数の元素を添加した場合の添加元素間の相互作用支配メカニズムも明らかにした.さらに,様々な結晶方位の組合せからなる薄膜積層構造を試作し,この拡散現象が面心立方格子の(001)面からなる界面においてのみ発生することを実証するとともに,拡散現象の添加元素依存性も実証した.本知見の汎用性を明らかにするため,次世代半導体デバイス構造として期待されている絶縁膜と金属電極界面の安定性解析に本手法を適用し,全く異なる材料系におきてもひずみ起因の異方的増速拡散現象が発生することを明らかにした. 以上,当初提案通りの研究目的を達成した.
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