本研究の目的は、2光子重合加工法によるナノサイズでの立体ポリマー構造作製技術を駆使し、ポリマーの力学特性におけるナノサイズ効果とそのメカニズムを実験から明らかにすることである。特に、力学特性のサイズ依存性が現れる大きな要因として、表面付近のポリマー鎖の状態とポリマーの周囲を取り巻く環境(溶媒、ガス等)の相互作用が重要なファクターであると考えられる。そのため本研究では2光子加工法の精度および分解能の追求に加え、作製したナノサイズのポリマー構造を破壊や歪みなど与えることなく周囲の雰囲気をコントロールする技術の確立を技術的な課題とする。 今年度の成果を以下に述べる。3次元ポリマーナノ構造テストパターンの作製では、2光子加工法を用いて半径100nm~500nmまで様々なサイズのPMMAポリマーナノワイヤーで形成されたコイルスプリングの作製に成功した。これまでの研究では、半径500nm以下になると、2光子加工後の現像・乾燥プロセスで現像液(エタノール)の表面張力や粘性によって容易に破壊され、バネとして取り出すことが不可能であった。本研究で提案する超臨界二酸化炭素を用いた洗浄・乾燥法によって、半径250nm程度までは非破壊のまま、自立したナノコイルスプリングを得ることに成功した。さらに、コイルスプリングの構造そのものに支柱を加え、超臨界二酸化炭素処理によって洗浄・乾燥した後、レーザーアブレーションによって支柱を切断することによってさらに細いポリマーワイヤーのコイルスプリングを取り出すことにも成功した。現在、最も細いもので半径200nmを切るコイルスプリングを自立した状態で非破壊乾燥することに成功した。今後は、これら作製したスプリングの弾性評価を行う。さらに、ポリマーの剛性率をもとめ、サイズ依存性について検証する。
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