本研究の目的は、2光子重合加工法によるナノサイズでの立体ポリマー構造作製技術を駆使し、ポリマーの力学特性におけるナノサイズ効果とそのメカニズムを実験から明らかにすることである。特に、力学特性のサイズ依存性が現れる大きな要因として、表面付近のポリマー鎖の状態とポリマーの周囲を取り巻く環境(溶媒、ガス等)の相互作用が重要なファクターであると考えられる。そのため本研究では2光子加工法の精度および分解能の追求に加え、作製したナノサイズのポリマー構造を破壊や歪みなど与えることなく周囲の雰囲気をコントロールする技術の確立を技術的な課題とする。 半径200nmを切るコイルスプリングを自立した状態で非破壊乾燥することに成功し、得られたコイルスプリングの弾性評価を行った。レーザートラッピングの技術により光学的に応力を印加する方法、原子間力顕微鏡を用いて、カンチレバーから応力印加する方法の2つの手法を検討した。レーザートラッピングの方法では、半導体レーザーにファンクションジェネレーターからの信号を入力し、レーザーの出力強度を任意の周波数で変調し、スプリングの共振周波数を検出する装置を新たに構築した。マイクロビーズをテストサンプルとしてレーザートラッピングを確認し、コイルスプリングの弾性評価に着手した。放射圧が小さくコイルスプリングの変位がわずかで、振動を検出する方法の検討が今後必要である。原子間力顕微鏡を用いる方法では、コイルスプリングの静的な圧力印加により、スプリングのバネ定数と、ポリマーの弾性率の定量化に成功した。以上の実験結果により、ポリマーの弾性をナノスケールで評価し、そのサイズ依存性を定量的に評価する方法を確立し、その基礎的結果を得ることができた。
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