研究概要 |
本研究はアンバランスド・マグネトロン・スパッタ法(UnBalanced Magnetron Sputtering Method:UBMS法)によるコーティング技術を高度化し,Ti合金やNi基合金などの耐熱性難削材の高能率切削を可能にする新しいコーティング工具を開発することを目的としている.平成22年度は耐熱性を確保した上で潤滑性を有するフリーカーボンを含有させたコーティング膜の開発に挑戦し,下記の結果を得た. (1)UBMS法によるコーティング膜は,AIP法のコーティング膜と同等の高い硬さと優れた密着性を示しながら,表面の突起物やピンホールが極めて少なく,表面平滑性に優れる.また,UBMS法によるTiCNは摩擦係数が低い. (2)XPS構造解析において,UBMS法によるTiCNはC-C結合のピークが高くなることから,フリーカーボンが多く生成されている. (3)一般的な切削速度V=50m/minだけでなく熱的負荷の大きい高切削速度V=220m/minにおいてもUBMS法によるTiCNを施したエンドミルは圧倒的に小さい逃げ面摩耗幅を示す. (4)被削材のむしれが発生しやすい高切削速度V=220m/minにおいても,UBMS法によるTiCNの場合は平滑な仕上げ面が得られる. (5)UBMS法によるTiCNの場合,工具逃げ面への被削材の凝着や工具すくい面への切りくずの堆積が大幅に抑制される. (6)UBMS法によるTiCNを施したエンドミルは,切削初期から著しく低い切削抵抗を示す.
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