次世代を担う半導体である窒化ガリウム(GaN)は、すでに実用化されているものの、有効な表面処理法が確立していない。表面は界面の始まりであり、デバイスの微細化により表面(界面)の状態がデバイスの特性を左右することから、表面の清浄化及び構造の解明が求められる。そこで本研究では、表面計測に基づくGaNエピタキシャル成長前の基板表面の作製技術の開発を目的とし実験を行った。超高真空中での加熱、スパッタリング、溶液によるエッチング処理を組み合わせ、原子レベルで平坦なGaN(0001)表面作製法を構築した。 超高真空中での3段階加熱処理により、表面に形成された自然酸化膜(約2nm)および有機汚染物(主に炭素)が除去され、局所的にステップ・テラス構造を持つ表面の作製に成功した。しかし、GaN結晶中に含有されている水素が窒素の脱理を助長することから、加熱温度を上げすぎるとGa過多になり組成が崩れ、表面にはファセットが形成され平坦度は低下することが分かった。一方、Arスパッタにより酸化膜を除去し、平坦化のためアニールを施しても平坦な表面は得られなかった。これは、スパッタにより表面の凹凸部が増加し、そこを核として多結晶やファセットが形成されるためである。今までに、Ar以外に窒素ガスなどを用いたスパッタが行われている。これらは局所的には平坦で正常な表面が形成されるが、温度上昇時に凹凸部から多結晶化や窒素抜けが起こるため、適当な手法とは言えない。 希釈酸・塩基溶液によるエッチングと加熱を組み合わせた処理では、各溶液の最適エッチング条件を確立し、HF溶液でエッチングした場合に2×2超構造をもつ平坦で清浄な表面の作製に成功した。GaNの基板表面の表面清浄化手法はいままでに確立されておらず、本研究での成果は清浄化手法が汎用の手法となるという大きなものである。
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