研究概要 |
微粒子を分散させた懸濁液を基板上に塗布・乾燥させる際,理想的には微粒子の単層最密の自己整列構造ができる.比表面積が大きいこれらの構造は生化学センサ等に適用されているものの蛍光顕微鏡等の高度な機器が必要となる.そこで本研究では,光学素子表面にこれらの構造を製作することで高感度化と選択性を付与することを目的とした実験を行った. まず,直径1ミクロンのシリカ微粒子を直径20mmのガラス凸レンズ全面に自己整列させた.三次元曲面上への整列例がこれまでなく,懸濁液濃度や懸濁液からの基板引上げ速度の影響等の基礎的な条件を明らかにした.結果的に,単層かつ最密構造を得るための条件などが明らかになった. 次いで,これらの微粒子表面を蛍光処理したタンパク質で修飾し,励起光を照射した際に発する蛍光を確認することで物質検出の原理検証を行った.さらに,レンズ片面から平行化した励起光を照射した時に出射される蛍光強度の空間分布を調べることで,レンズによる集光性能を評価した.平面基板にタンパク質を修飾した場合に比べ,平面基板に微粒子構造を製作した場合の蛍光強度は4倍,凸レンズに構造を製作した場合は6倍に向上することがわかった. ただし,空間分布の結果からレンズ表面付近での散乱によって想定よりも強度上昇が限られることもわかり,今後の更なる感度向上のための指針を得ることができた. 微粒子による表面積増加とは異なり,これらをマスクとしたドライエッチングで得られる微細構造についても検討を進め,面積の増加割合やタンパク質修飾による蛍光強度の向上度合などを明らかにした.さらに,このような構造から転写したシリコーン樹脂上で細胞を培養すると培養速度が上昇するとともに細胞と構造の間の接着強度が弱めることができることなども明らかになった.
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