平成23年度は、前年度に開発した観察装置を利用し、ゲルの表面摩擦現象における潤滑層形成の様子を直接観察した。また、ゲル表面の物性(弾性率や表面ラフネス)を変化させることにより、潤滑層形成がどのように変化するかを調べることにより、広範な知見を得ることを目指す。具体的には下記の項目を実施した。 1)ガラス基板の親水性/疎水性を変化させるために、観察用の台形プリスムの表面に薄いガラス基板(カバーガラス)を貼付けて、摩擦基板とすることで、摩擦相手ガラス基板の交換を可能にできる機構を観察装置に組み込んだ。 2)シランカップリング剤を用いて、親水性/疎水性を制御したガラス基板を作製した。接触角の測定により、再現性良く作製する方法を確立した。 3)観察条件によりプリズムの上下方向の位置が変化しても追従できる機構を開発した。 4)PVAとポリアクリルアミドゲルについて、濃度や架橋剤の量を変えて、異なる表面硬さをもつゲルを調製し、ゲル摩擦界面を直接観察した。表面堅さの違いにより潤滑層形成が始まる摩擦速度が異なることが観察された。 5)ゲル表面のラフネス(表面粗さ)を変える方法として、磨りガラス・サンドペーパーをテンプレートとしてゲルを調製し、ゲル摩擦界面を直接観察した。フラネスが強くなるほど、潤滑層形成過程の速度領域が拡大し、転移過程が不明瞭になることが観察された。 また、昨年度に試作した薄膜干渉流動画像法(FIFI)の装置を利用し、屈曲高分子が薄い液体層の乱流を抑制する効果を調べ、高分子の伸張による粘度増大に起因する可能性を指摘した。
|