研究概要 |
確率共鳴現象とは,ノイズの混入により逆に感度が高まる現象であり,非線形特性を示す数多くの物理現象において観察される複雑系科学現象の一つである.一方,接触して擦ることによってセンシングする触覚では,環境ノイズの混入が避けられない.本研究では,この確率共鳴現象を活用して,ノイズにより感度を高める新しい概念の触覚センサと触覚ディスプレイの開発を目的として以下の項目について研究を進進めてきた. (1)系統的な心理物理実験によりヒトの触覚における神経的確率共鳴現象について調査する. (2)有限要素解析により皮膚の力学構造によって生じる力学的確率共鳴現象について調査する. (3)得られた知見に基づいて,ヒトの触覚の確率共鳴現象の数理模型を定式化して,神経的確率共鳴現象と力学的確率共鳴現象の関係を調査する. 前年度では,垂直振動とせん断振動の実験結果を比較すると,垂直振動の方が顕著な確率共鳴現象が発生することなどを明らかにして,それに基づいて非線形素子のネットワーク構造によるモデルを考案した.当該年度では,触覚センサをモータ駆動式の移動ステージに設置して5~20μmの段差のある試料を走査する実験を行い,得られた電圧信号を前述のモデルに入力すると,正しい段差の値を出力できることを確認した.
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