研究概要 |
Ghost Fluid法を用いて,生体を模擬した各種壁面(ゼラチン,肝臓など)近傍での入射衝撃波と気泡との干渉問題を解析し,気泡崩壊が生体組織に及ぼす影響を調べた.その結果,硬い壁面の場合には,入射衝撃波の壁面での反射の影響のため,気泡がより激しく崩壊し,気泡崩壊による壁面での衝撃圧力が上昇することが示された.また,壁面損傷(壁面の変形速度)は,気泡崩壊時の衝撃波による壁面での力積と強い相関があることが明らかとなった.また,生体壁面の張力を考慮した壁面モデルを考案し,Ghost Fluid法で気泡の崩壊挙動を解析した結果,生体壁面の張力により気泡崩壊時の液体ジェットの方向が変化することが示された.さらに,気泡崩壊に伴う治療性分子の輸送をGhost Fluid法を用いて解析した結果,分子の輸送を促進するには,気泡崩壊時の液体ジェットにより形成される渦流れを利用することが有効であることが示された.また,生体組織内部への分子輸送をシミュレートする方法を考案した. 注射器による準静的な圧力変動または超音波による高速な圧力変動下におけるリン脂質に覆われたマイクロバブル(音響性リポソーム)の挙動を観測した.その結果,準静的に気泡が収縮する際には,気泡表面に凹凸の形成とその消滅が繰り返され,気泡半径が階段状に変化することが示された.また,超音波による圧力変動下での気泡振動実験を解析した結果,リン脂質分子層により気泡の表面張力は低下し,低下した表面張力の下で,気泡の表面振動がパラメータ励振の機構により引き起こされることが明らかとなった.また,リン脂質分子層の離脱に伴う表面張力の変化を考慮した気泡モデルを提案し,リン脂質分子層の離脱による表面張力の低下が,気泡の半径変化を決定する重要な因子であることを示した.
|