本研究の目的は、固体面上液滴の濡れ性を定量的に予測する接触角予測式を構築することである。固体面上の液滴の濡れ性は、三相界面(気液・固気・固液)が交わる接触点の力学的平衡条件(ヤングの式)により定式化され表面張力と接触角により成り立つが、実際の接触角を正確に予測できない。申請者の理論的研究により導出された新たなヤングの式は、液滴半径をさらに変数として加味した式である。その式は、液滴半径と液滴接触角の関係に関する既往の実験結果を定量的に予測できるものの、より一般的な接触角予測式を構築するためには、理論式中に現れる任意変数を実験的に把握する必要がある。 今年度はCCDカメラ、LED光源、シリンジ等を購入し接触角測定装置の製作を行った。液体試料として主に純水を用い、固体試料としてシリコン系のゴム基板を用いることで接触角及び液滴サイズの測定を行った。具体的には、室温環境下において1マイクロリットルから320マイクロリットルの液滴を、固体基板の上に付着させその状態を観察した。その結果、液滴のサイズが増加するにつれ接触角も増加する傾向を実験的に確認し、純水においては液滴半径が2ミリメートルより大きくなると接触角はある一定値に近づく結果を得た。申請者の導出した修正ヤングの式と実験データのフィッティングから、それらデータの傾向を予測することができたものの、十分な理論式の考察を行うために液体の種類を増やした実験及びデータの精緻化を行う予定である。
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