研究概要 |
研究実績を以下に箇条書きでまとめる。 (1)油相の温度場計測 作動流体が水に限定されていたレーザ誘起蛍光法(LIF)の測定対象を混相流へと拡大するため,多様な油溶性染料の蛍光スペクトルの温度依存性を測定した.その結果,蛍光発光強度が室温付近で-2%/Kの温度感度を有する染料が存在することが明らかとなり,染料を溶解させたオレイン酸の温度-蛍光強度の関係を定量化し,LIFの測定対象の拡張に成功した.併せて2色LIFへの適用可能性も確認した. (2)液滴操作時の界面挙動の把握 微小液滴の位置を精密に計測し,光照射時の挙動及び位置が,重力,浮力と光熱マランゴニ対流による駆動力によって支配されることを示した.micro-LIFによって計測した温度分布から温度勾配を求め,これと液滴の移動方向から液滴に作用する駆動力を導出し,その駆動力が光ピンセットを用いた場合と比べて100倍以上強いことを確認し,本手法の有効性を示した. (3)テストデバイスの試作及び性能評価 液滴の多彩な操作を実現するため,2層のPDMS流路から構成されるマイクロ流体デバイスを設計・製作した,連続相をオレイン酸,分散相を水とした液滴流に対して,光パターン照射による液滴の軌道制御,捕捉,分級を実現した.各種操作における光出力や液滴サイズ依存性を精査し,影響因子を抽出して液滴操作の工学的モデリングを行った.捕捉性能はレイノルズ数とマランゴニ数でまとめることができることを見出し,ノズル型光パターンを照射した際の液滴の輸送は移流速度とマランゴニ対流速度との関係で決定される閾値で分類できることを示した. (4)新規微小液滴実験プラットフォームの提案 これまでに得られた知見及び成果を総括し,光熱効果を用いたリモート液滴実験の可能性を提案し,新たな実験プラットフォームの概念設計を提示した.
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