研究概要 |
本研究は,高圧環境下では空隙が小さい多孔体といえどもレイノルズ数増大により乱流化し,かつ火炎帯厚さが減少するため,微小空間に乱流火炎伝播が生じる可能性に着目し,この新しい多孔体内燃焼形態の実現とメカニズムを明らかにすることを目的とする. 本年度は,昨年度製作し実験を行った2次元モデル充填層に加え,実用反応炉の基本構造である円筒内(観測のため石英ガラス製)に球形ペブルが充填された3次元充填層を製作し火炎伝播実験を行った.その結果,2次元モデル充填層と同様に,大気圧下では火炎伝播しない流速条件でも高圧下では火炎伝播が生じること,火炎伝播速度は圧力と共に増大することがわかった.以前に行った開放ブンゼン型乱流火炎による乱流燃焼速度との関係を調べた結果,同様の圧力依存性を示し,ペブル充填層内の火炎伝播は乱流火炎伝播となっていることを強く支持する結果が得られた.火炎伝播限界に関して,圧力効果を考慮したレイノルズ数に依存するヌセルト数を試算すると,火炎からペブルへの乱流熱伝達による熱損失と火炎の発熱速度とのバランスによって消炎が生じることがわかった. 側壁からレーザーシートを導入するように改良した2次元モデル充填層を再び用い,パルスレーザによる紫外光を照射して伝播火炎のOH-PLIF計測を行った.その結果,ペブルを模擬した円柱間の隙間を伝播する火炎前縁部には微細な凹凸があり,乱流火炎の様相を呈していることが確認された.また,円柱群からなるマイクロチャンネル内を多方向に火炎が伝播すると共に,伝播火炎の先端部はエッジフレームと共通するOHラジカル分布の特徴を有していることも判明した.これらのことから,高圧下ペブル充填層内を伝播する火炎は乱流火炎となり,充填層内で生ずる乱流特性を知ることができれば火炎伝播速度や伝播限界を予測できることが明らかになった.
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