空気を加熱加湿し冷却除湿する湿度操作によって,空気中に存在する浮遊粒子状物質(SPM)は,吸い込み流れ,熱泳動,拡散沈着,重力沈降など多様な機構で除去される。本研究は,この湿度操作を利用した,空気中のナノ~マイクロメートルサイズにわたる全SPM,およびガス状化学物質の除去技術を提案し,その性能,実現性を明らかとすることを目的としている。 本年度は,実験装置の規模を拡大し,熱交換器形状を試行錯誤した結果,平板フィン型の加湿器とコイル型の除湿器の組合せによって,絶対湿度を約20%操作することで,30リットル毎分の空気流量に対して最大95%のSPM除去ができることが示された。また,装置内のSPMの分布,温度分布の測定からは,凝縮器後の比較的低温な空気が流れる底部に残存したSPMが多数あることが観察された。従来の理解では,壁面近くの低温部ではSPMは壁面へ輸送されて除去されてしまい,比較的温度の高い部分にSPMは残存すると思われていたため,温度の高い領域から低温領域へSPMを輸送する未知の機構が存在する可能性が見出された。 また,提案手法のガス状化学物質除去特性に関しては,入口濃度670ppmのアンモニア混合空気から湿度操作により,約55%のアンモニアを定常的に除去できることが示された.さらに,非定常除去特性からは,装置内部の滞留水を速やかに除去することで除去率を促進出来る可能性が読み取れた。 本システムのエネルギー評価に関しては,小型ヒートポンプを利用した加湿器・除湿器を装置に組み込み,空気流量100リットル毎分の条件で試験的に運転したところ,利用電力量を約1/4に低減できることが確認できた。
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