炭素繊維強化プラスチック(Carbon fiber Reinforced Plastics : CFRP)は,アルミ合金よりもさらに軽量・高強度で,かつ圧延鋼板と同程度の剛性を有し,一体成形性にも優れており,今日では,航空機・高速鉄道車両・自動車などに革新的な軽量化を施すために欠くべからざる構造材料である.ところで,このCFRP積層材は,曲げ/ねじり剛性の増加に伴う共振点の高周波数側シフトや振動減衰能が小さいことなど,制振特性に問題がある.また,層内樹脂割れ(マトリックス クラック)や層間はく離(デラミネーション)といった積層材特有の損傷の発生・進展をどう防ぐかという耐損傷設計も重要であり,今後のさらなる普及に向けて,CFRP積層材の制振/耐損傷性能の向上や機能化/知能化を図る材料技術の開発が望まれている. 本研究では,CFRP積層材へ,粘弾性素材と圧電素材を組み合わせた新たな層ユニットを導入することによるCFRP積層材の制振/耐損傷性能向上のメカニズムについて,主にFEM数値解析から探究することを試みた.さらに,ダンピングシートを中央層間に挿入したCFRP積層材を実際に成形し,インパクトハンマ加振/強制加振試験およびハイスピードカメラを活用した落錘衝撃試験もそれぞれ実施し,特に本供試体の制振/耐損傷性能を実測し,本研究で提唱する積層構造材料技術の効果を実験的に裏付ける道筋をつけることができた.本研究成果により,FEM数値解析と実験モード解析とをハイブリッドに組み合わせて,本研究で提唱する粘弾性/圧電フィルム層ユニットによるCFPR積層材のアクティブ制振/耐損傷性能の高精度評価,さらには最適化および知能化を目指していくことが可能となった.
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