研究概要 |
本研究の目的は,電力伝送の一手法で,共鳴方式と呼ばれる方法を用いて体内埋込医療機器への電力伝送を行う事である.これにより,機器を埋め込んだ患者は機器の駆動電源を全く意識する事無く日常生活を送る事が可能となる.言わば革新的な埋込医療機器の形態を実現するユビキタス電源システムの構築である.完全埋込型人工心臓や完全埋込型除細動器に代表される数Wから数十Wレベルにおける医療機器の電源は,この新しい電源システムが備えられた居室や寝室等に居るだけで常時安定した電力供給が為される事となり,本研究においては全く新しい概念の電源システム実現が最終目的となる.まず今年度は以下の仕様でコイルを作成し検討を行った.送信側のコイルは直径600mm,約5turnのヘリカルコイルとし,このコイルに電力を投入するために,直径500mmのフープコイルを用いた.受信側も同様の構成であり,送信側のフープコイルに電力を投入し,受信側のフープコイルから電力を取り出す事とした.また受信側の負荷として電球を利用し,コイル間のギャップをコイルの直径で規格化して効率を計算した.なお最終的な実験では周波数約10MHz,ギャップ1mにおいて100W以上の電力伝送を確認した.なお,この実験は全てシールドルーム中で行った.磁界共鳴型の方式を用いた非接触電力伝送の実験を行ったが,一次側と二次側のコイル間ギャップが小さい場合の効率は70%程度であり,コイル間ギャップがコイル直径と同じ場合の効率は55%程度であった.コイル間ギャップが小さいときに最大効率とならなかった原因は,フープコイルから一次側のコイルにエネルギーを投入する段階の効率が最大でも90%前後であり,受信側にも同一の構成があることが主因であると考えられる.また、コイル直径の3倍以上のギャップで電力伝送ができなかった理由としては,コイルのQの値が低下したためであると考えられる.引き続きこの結果を用いて,体内埋込機器に適した電力伝送の構築を行う予定である.
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