研究概要 |
本研究は,一般的に共鳴方式と呼ばれるエネルギー伝送方式を用いて体内埋込医療機器へ非接触電力伝送を行う事が主な目的である.これにより,機器を埋め込んだ患者は機器の駆動電源を全く意識する事無く日常生活を送る事が可能となる.言わば革新的な埋込医療機器の形態を実現するユビキタス電源システムの構築であり,全く新しい概念の電源システム実現が最終目的となる.ここで,共鳴方式と一般的に呼称されている方法であるが,解析の結果,所謂電磁誘導方式の範疇に含まれる事も理解されてきた. 今年度は,完全埋込型人工心臓や完全埋込型除細動器に代表される数Wから数十Wレベルにおける医療機器電源としての最適な構成について検討を行った.人工臓器をはじめ給電対象となる機器の多くが,電源として定電圧源を要求するため,受電側の負荷変動があっても出力電圧が安定していることが求められる.特に医療機器に於いては安定動作が一般家電機器より高い精度で求められる.そこで受電回路のインピーダンスマッチング方式を変え,負荷電圧変動の安定化について検討を行った.対象モデルとして,4つのマッチング回路を設計し,それぞれを直列共振,並列共振,直並列共振,並直列共振とした.本検討ではユビキタス利用を目指し,1次コイル,2次コイル間の結合を低結合条件とした.また,この条件で1次コイルを定電流駆動する事により,2次コイルの開放電圧が一定となり受電回路単独での評価を可能とした.概ね直列共振は幅広い負荷に対して変動を小さくでき,また,並列共振は最大電圧を大きく設計できる事がわかった.直並列・並直列共振は両者の中間的な性質をもつ詳細な結果を得る事ができた.負荷電圧変動とインピーダンスマッチング方式の関係について検討を行い,方式により最大電圧と負荷電圧の安定度を選択して設計できることがわかった.受電デバイスに印加する電圧とその安定度から適切なマッチング方式を選択することが重要であり,引き続きこの結果を用いて,体内埋込機器に適した電力伝送の構築を行う予定である.
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