本研究では、量子情報通信用単一量子ドット光源を実現するために、正孔局在型InGaSb系量子ドットの作製技術を開発することを目的とする。量子ドットは、主として基板との格子不整合度を利用したStranski-Krastanov(SK)モードにより作製されるが、ドットの低密度化やその生成位置を制御することが困難である。そこで、表面反応制御による低密度ドットの作製手法と、ナノファセットによるドット生成位置の制御手法の開発を行った。 量子ドットの低密度化では、トリスジメチルアミノアンチモン原料を用いて成長表面反応を制御することにより、10^6cm^<-2>台と低密度でサブミクロンサイズのGaAsSbドットを自己組織的に作製する技術を開発した。さらに、ドット表面を選択エッチングし、ドット上部に直径100nm程度の真円形状の(001)ファセットのテラスを形成した。InGaSb層をこのドット表面に2次元成長することにより、ファセットでの成長速度の差により生じる井戸幅揺らぎを利用したディスク状の量子ドットが低密度で作製可能になる。また、GaAsSbドットを選択エッチングで除去すると、その位置に直径が数百nmで、高さが6nm、幅が50nm程度のGaAsリング構造が自己組織的に形成できた。その表面上にSKモード条件でGaSbを成長すると、SKドットが生成される前に、2個の量子ドットがナノリング上に選択的に対に形成されることがわかった。従来のSKモードでは量子ドットの生成位置制御は困難であるが、ナノリングのファセット面を利用することにより10^6cm^<-2>台の低密度で位置を制御して量子ドットを作製することが可能となった。
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